景観十年、風景百年、風土千年といわれている。これは景観というものはほぼ十年で具現・認識され、風景はその景観十年が十回以上繰り返され成立するものであり、風土はその風景百年がまた十回以上という途方もない記憶の堆積によって成り立っているということを示している。 景観は風景、風土の土台になるものであり、風土の無い住空間というものは殺伐たるものとなり、それは健全なる五感を働かせることが出来る人々の住まう場ではあり得ない。 したがって、景観の無いところには風景も生じないし、風景の無いところには風土も成立しえないということになる。
さて、日本の近代化は東洋社会における成功事例として示されることが多々ある。 それはGDP(Gross Domestic Product=国内総生産)が世界第二位に達し、ものとしての豊かさが達成されたということである。 しかし、それは日常生活への満足度が世界第二位になったというこということであろうか。 現代日本社会の生活環境を鑑みれば、このGDP世界第二位という豊かさを維持している社会は、大量生産・大量消費・大量廃棄という不可逆的システムをもたらし、住環境に深い傷跡を残すような負の遺産の上に成り立っている。
それは、自分がどこに住んでいるか解らないような個性を失った紋切り型の景観の中に住むことになり、住むことはまるで大量生産・大量消費・大量廃棄というベルトコンベアに乗っているかの感を呈し、人と人との繋がりは失われ、人が人として住むことに必要な健全なコミュニティーが喪失されてしまったのである。 本来の豊かさを享受するとは安心・安全で健全なる時間と空間の中に住んでいることが前提となるであろう。 近代化をもたらすべく江戸時代末期に来日し、日本の素晴らしい景観とそこに住まう人と人との暖かいつながりに感動した欧米人は、現代日本社会を見て何と思うことであろうか。
「良き景観があるところ良きコミュニティが存在し、良きコミュニティは良き景観を創造する」という確信の下に、良き景観と良きコミュニティーを取り戻し、且つこれからそれを新たに作り上げるためにも大量生産・大量消費・大量廃棄というシステムの中にある企業・行政・住民は、協力し合ってその持続不可能なシステムから新しい持続可能なシステム(Sustainable System)への転換を計るときが到来している。 今や、企業はCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)を実践し、行政は公正公平にそれを支え、住民は積極的に本来の豊かさを求める運動に参加することが必須となるであろう。 我々は、新たなシステムづくりのために企業・行政・住民が積極的かつ円滑に協働すべき共生の場(フォーラム)を提供する機関として日本景観フォーラムを設立するものである。
特定非営利活動法人日本景観フォーラム 理事長 斉藤全彦
役職 | 役員名 | |
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理事長 | 斉藤 全彦 英国国立ウェールズ大学経営大学院准教授、専修大学・駿河台大学・松蔭大学兼任講師 日本景観学会理事、日本経営倫理学会会員、日本GNH学会会員・地域デザイン学会会員 |
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理事 | 石見 茂夫 フィンランド健康福祉センター・FWBCフィンランドOy東京事務所代表 |
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理事 | 豊村 泰彦 | |
理事 | 丹羽 譲治 | |
理事 | 南口 清二 | |
監事 | 石山 力 税理士 |
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事務局 | 尾崎 孝行 フォトグラファー |